マーケティングとは『あなたから買いたい』と思わせること

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「なぜ顧客は私たちから買ってくれないのだろう?」

この切実な悩みを抱える経営者は少なくありません。良質な商品やサービスを提供しているにもかかわらず、思うように売上が伸びない。そんな状況に直面している方も多いのではないでしょうか。

実は、この問題の核心は「信頼関係の構築」にあります。本記事では、顧客との信頼関係を築き、真のマーケティングの本質である「あなたから買いたい」と思われるビジネスを作る具体的な方法をご紹介します。

1. 現代のビジネス環境

2015年の日本の小売市場規模は約70兆円と推計されています。
一見すると大きな市場に見えますが、この市場の中で新規顧客を獲得することは、年々難しくなっています。経済産業省の調査によると、消費者の75%以上が「必要最低限のものは既に持っている」と回答しています。また、あらゆる商品やサービスにおいて、代替選択肢が豊富に存在する時代となりました。

例えば、スマートフォン一つを例に取ってみましょう。AppleやSamsung、Google、そして様々な中国メーカーの製品から選択が可能です。各メーカーはハイエンドからミドルレンジまで、幅広い価格帯で製品を提供しています。消費者はこれらの中から、自分のニーズと予算に合った製品を自由に選択できます。

さらに、インターネットの普及により、価格比較や製品レビューの検索が容易になりました。消費者は豊富な情報を基に、より賢明な購買決定を下せるようになっています。このような環境下では、単に「良い商品がある」「優れたサービスを提供している」というだけでは、顧客の心を掴むことはできません。


2. 消費者の購買プロセス:AIDMAとAISAS

マーケティング用語で、AIDMAやAISASという言葉があります。
消費者がモノやサービスを知ってから買うに至るまでの心理的・行動的なプロセスを表す言葉です。

AIDMA
Attention(認知)商品やサービスを知る
Interest(興味)興味・関心を持つ
Desire(欲求)欲しいと思う
Memory(記憶)
次に見た時に思い出せるように記憶しておく
Action(購入)購入する
AISAS
Attention(認知)商品やサービスを知る
Interest(興味)興味・関心を持つ
Search(検索)インターネットで検索する
Action(購入)購入する
Share(共有)SNSなどにシェアする

興味を持って欲しいと思っている間、競合と検索・比較されている間に、あなたが選ばれることが必要なのです。


3. 消費者の選択基準:誰から買うか

では、消費者がどのように会社やお店を選んでいるのか。

※身近なスーパーやドラッグストア、ネット通販のように、いつものお店、妥当な価格、利便性などで選ぶような消耗品は除きます。

付加価値(価格)や専門性が高いものというのは、何を買うか、いくらで買うか、では悩むことは少なく、どこで買うか、さらに言えば、誰から買うかが重要になっています。

例えば、新築住宅の購入を考えてみましょう。ある大手住宅メーカーの顧客調査では、家を建てる際の業者選定で最も重視した要素として、「信頼できる人柄」(47%)が「価格の適正さ」(32%)を大きく上回りました。

この傾向は、他の専門的なサービスでも同様です。医療サービスを選ぶ際、患者の68%が「医師の人柄や対応」を最重要視すると報告されています。また、資産運用アドバイザーの選定では、「専門知識」(35%)よりも「信頼できる人柄」(42%)が重視される結果となっています。

このような現象が起こる理由は、商品やサービスの質を事前に判断することが困難だからです。住宅の構造的な品質、医療処置の適切性、投資アドバイスの妥当性など、これらは専門的な知識がなければ判断が難しい要素です。そのため、消費者は提供者との信頼関係を重要な判断基準とするのです。

4. 信頼獲得の重要性

とすると、あなたを信頼してくれる人を増やす方法こそが、企業の存続に大きく関わってくることになります。

では、具体的にどのように信頼を獲得すれば良いのでしょうか。
信頼を獲得する方法とは、見込み顧客とのコミュニケーションです。

まず重要なのは、専門知識の共有です。
顧客が抱える疑問や悩みに対して、専門的な知見を惜しみなく提供することで、信頼関係の土台を築くことができます。例えば、東京都内のある税理士事務所では、確定申告に関する詳細な解説ブログを週1回発信することで、大きな成果を上げています。彼らは、確定申告の基礎知識から応用的なテクニックまで、段階的に情報を提供しています。その結果、ブログ開設から1年で月間問い合わせ数が3倍に増加し、新規顧客の獲得につながりました。

次に重要なのは、事業の透明性を確保することです。
価格設定の根拠を明確に説明し、製造工程や仕入れ先の情報を積極的に公開することで、顧客との信頼関係を強化できます。実際、神奈川県のあるオーガニック食品店では、生産者の顔写真と栽培方法を詳細に紹介することで、大きな成果を上げています。彼らは、農薬や肥料の使用状況、収穫から店頭に並ぶまでの流通プロセスまで、すべての情報を開示しています。この取り組みにより、客単価が40%向上し、定期購入者も着実に増加しています。

さらに、一貫したコミュニケーションの維持も重要です。
定期的なメールマガジンの配信や、SNSでの日常的な対話、充実したアフターフォローなど、継続的な関係構築が信頼を深めます。大阪のある家具メーカーでは、購入後5年間にわたって定期的なメンテナンス情報を提供し、顧客との関係を維持しています。この取り組みにより、リピート購入率が従来の15%から35%まで向上した事例があります。

5. インターネットを活用した信頼構築

そこで、信頼獲得に有効活用できるのがブログなどのインターネットによる集客なのです。

店舗がある地域ビジネスを展開している企業であっても、ネット(ブログやHP)とリアル(店舗での接客)の融合が必要です。専門的な情報を定期的に発信し、顧客の悩みに応える情報を提供することで、潜在顧客との接点を作ることができます。

SNSの活用も効果的です。facebookやLinkedInを活用して業界の最新情報を日々発信。投稿内容は、専門的な分析から日常的な業務風景まで多岐にわたります。特に、プロジェクトの舞台裏や、クライアントとの打ち合わせ風景なども適切な範囲で公開することで、より親近感のある企業イメージを構築することができるでしょう。

オンラインイベントの活用、例えば、定期的にオンライン相談会を開催することが考えられます。これは、実際の来店が難しい遠方の顧客や、まだ具体的な購入予定のない潜在顧客とも、気軽にコミュニケーションを取れる機会となっています。

マーケティングの本質は、単に商品やサービスを売ることではありません。それは、顧客との信頼関係を構築し、『あなたから買いたい』と思わせることなのです。特に現代のデジタル社会では、インターネットを活用した信頼構築が重要な戦略となります。

今日から、あなたの事業でも顧客との信頼関係構築に焦点を当てたマーケティング戦略を実践してみてはいかがでしょうか。『あなたから買いたい』と思われることこそ、マーケティングの真髄であって、今取り組むべき対策です。

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