EXCEL・スプレッドシート業務革命!AIで作る自動化プログラムの実装事例

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EXCELやGoogleスプレッドシートは多くの中小企業で業務効率化の要となるツールですが、AIとの連携により、その可能性は無限に広がっています。例えば、Google Apps Scriptを活用することで、スプレッドシートのデータ処理や分析作業を自動化し、大幅な時間短縮を実現できます。

今回はAIに指示をして、Google Apps Scriptの自動化プログラムを作った事例とともにご紹介していきます。

中小企業のデジタル化の障壁

昨今、業種別に多機能で、使い勝手のよい低価格なソフトウェアやサブスクリプションサービスが存在しています。

しかし、中小企業にとっては、これらのソリューションを導入していないことが実態です。

その理由として、市場に存在する多様なソリューションの中から、どのソリューションが自社に合致するのか、判断するための情報や知識が不足していることが多いのです。
資金力のない中小企業にとっては、導入コストや継続的な利用料も障壁の1つとなっています。
また、企業向けの大規模なシステムでは、中小企業にとっては不要な過剰機能が多く含まれている反面、中小企業特有の業務プロセスや独自の処理に対応できないケースも多く見られます。新しいソリューションの導入に伴い、既存の業務プロセスを大幅に変更しなければならない場合もあります。これは、従業員の抵抗を招いたり、一時的な生産性の低下を引き起こしたりする可能性があり、中小企業にとっては大きなリスクとなります。

中小企業では、新しいツールの使い方を従業員に教育するリソースが限られており、外部からの支援を受けることも容易ではありません。結果として、導入したツールが十分に活用されず、期待した効果が得られないことがあります。

こうした理由から、多くの中小企業では、中小企業のデジタル化や業務効率化、俗に言う『DX化』が進んでいないのが実情です。

EXCELとスプレッドシートの課題

そのなかでも、多くの企業でデータ管理ツールとして使用されているのが、EXCELやスプレッドシートですが、いくつかの課題や限界があります。

まず、手動作業の多さが挙げられます。
データ入力やフォーマット調整、関数の適用など、多くの作業が人手に依存しており、時間とコストがかかります。また、この手動作業の多さは、ヒューマンエラーのリスクを高めます。入力ミスや計算式の誤りが、重大な判断ミスにつながる可能性があります。
特に、ITリテラシーの低い従業員にとっては、複雑な関数や高度な機能の使用が困難であり、生産性の低下や業務の偏りを引き起こす可能性があります。この操作の難しさは、組織全体のデータ活用能力に影響を与え、デジタル化を推進する上での障壁となることがあります。

さらに、EXCELの分析機能には限界があります。
大規模なデータセットの処理や複雑な統計分析、機械学習モデルの適用などは、EXCELの標準機能では困難です。

これらの課題は、特に変化の激しい現代のビジネス環境において、企業の競争力に大きな影響を与える可能性があります。

AIとGoogleスプレッドシートによる解決策

これまで述べてきた中小企業のデータ管理における課題に対し、AIを活用することで革新的かつ実用的な解決策を提供することができるようになりますので、ご紹介していきます。

AIに要望を伝えると、専門的な回答を出してくれる

「どのソリューションが最適かわからない」という課題に対し、AIに相談するという新しいアプローチが可能になりました。AIは膨大な情報を分析し、各企業の特性や要望に合わせて最適な解決策を提案することができます。複雑な意思決定プロセスを支援し、中小企業でも大企業並みの戦略的選択が可能になります。

ユーザーは日本語でAIに要望を伝えるだけで、専門のプログラミング言語を勉強することなく、簡単なシステムが即座にできあがってしまいます。

今後、様々なAI活用が促進されていきますので、ぜひAIの扱いには慣れていきましょう!

無料で必要な機能に特化したシステムが作れる

Googleスプレッドシート上で操作させるならば、GoogleAppsScriptという無料で使える開発ツールが有効です。上記のとおり、AIに要望を伝えれば、AIは既存の業務プロセスのまま、必要な機能だけに特化したスクリプトを作成してくれて、Googleスプレッドシート上で動作させることができます。これにより、高額なソフトウェアを購入することなく、必要な機能だけを実装できます。

これらの特徴により、中小企業は最小限の投資と労力で、自社のニーズに最適化されたデータ管理ソリューションを構築できます。AIとGoogleスプレッドシートの活用は、中小企業のデジタルトランスフォーメーションを加速させ、大企業との競争力格差を縮める強力なツールとなるでしょう。

実装事例:バーの在庫管理システム

「手書き記録⇒EXCELに書き写す」⇒「スマホ入力、スプレッドシートに自動反映」 

個人経営店のバーでは、小売業の在庫管理のようにバーコードやRFIDタグのような多品種大量の在庫を扱うわけではないため、有料のソフトウェアなどの導入も進んでおらず、目視による判断、紙に記入、Excelによる在庫管理が一般的です。

そこで、従業員のスマートフォン端末から、在庫情報を入力させる画面(Webアプリケーション)を準備してみました。

この画面や操作を作るときの、AI(例えば、ChatGPTClaude、いずれも無料で使用できます)への指示文は、以下のようなものです。

GoogleAppsScriptのスマホ用Webアプリケーションで、在庫入力画面を作りたい。

Googleスプレッドシートの在庫管理シートを読み取り、A列のカテゴリーごとに、C列の商品名、D列の在庫数を小数点第1位まで表示させる。
在庫数は整数部分と小数点部分を分けて、選択入力できるようにする。
決定ボタンを押すと、変更された商品の在庫数のみ、D列の在庫数、E列の更新日時を更新する。
更新が完了したら、「在庫入力が完了しました。お疲れ様でした!」とメッセージアラートを表示させる。

スマホで入力するので大きい文字で見やすく、スマホ画面横幅いっぱいに表示、入力欄を揃えるようにデザインして。

「在庫管理表を確認しながら発注書を書く」⇒「発注書が自動で作成される」

営業後の在庫入力が終わったら、あらかじめ設定しておいた基準在庫数を下回った場合に、酒屋に最小ロットで発注する、という指示を作っておくだけで、毎日決まった時間に、発注書PDFが自動でできる、というものです。

この操作を作るときの、AI(例えば、ChatGPTClaude、いずれも無料で使用できます)への指示文は、以下のようなものです。

GoogleAppsScrpitを使って、在庫管理シートから発注書を作成したい。

まず、在庫管理シートの2行目以下を読み取る。
商品管理シートC列(商品名)と、商品管理シートC列(商品名)とをマッチングさせて、商品管理シートF列(発注起点の在庫数)よりも、在庫管理シートD列(現在の在庫数)が小さい場合に発注対象とし、商品管理シートE列の仕入先名とD列の最小発注量を取得しておく。

発注内容が決まったら、仕入先ごとに発注書レイアウトシートに沿って、内容を出力する。

発注書の入力内容は以下のとおりです。
- セルA2:仕入先名 + " 御中"
- セルH3:本日の日付(yyyy/mm/dd)
- セルB6:"mm月dd日発注分" (mm,ddは本日の日付)
- セルB7:"mm月dd日" (mm,ddは本日の日付)
15行目から34行目は、発注明細となり
- セルA:発注対象の商品名
- セルD:商品管理シートから取得した最小発注量
- セルE:"本"
※もし、34行目を超えてしまう場合には、2枚目のシートを作成しPDFを結合して出力してください。

発注書はPDF化して、Googleドライブに出力する。
出力するファイル名は、yyyymmdd_仕入先企業.pdf

技術的には、作った発注書をEメールに添付して、酒屋に自動送信することも可能ですが、内容を確認してから送る、という工程はあえて残しておきました。

(※Eメールの下書きとして保存しておき、確認後、送信ボタンを押すだけ、とすると良かったかもしれません。下記のように指示を出せば、Eメール作成の機能追加も簡単です。)

以下の内容に加えて、作成したPDFを添付したEメールを作って。

宛先メールアドレス:仕入先一覧シートF列
件名:[Bar 123] mm/dd 分発注書
本文には、(会社名)仕入先一覧シートA列 (担当者名)仕入先一覧シートE列 と、簡単な挨拶文もつけてください。

Eメールは送信せずに、下書きの状態としてください。

GoogleAppsScriptの作り方

Googleスプレッドシートを開き、
拡張機能 > Apps Scriptを開きます。

AIによって作成されたスクリプトをこの部分に貼り付けるだけです。

コンサルタントの役割の進化

これまで私は、コンサルタントとして多くの中小企業に業務改善アドバイスや、関連するソリューションの導入を提案してきました。

しかし、今や、単なるアドバイスや既存ソリューションの紹介にとどまらず、AIを活用して企業の具体的なニーズに合わせた簡易システムを作成し、提供することが可能になりました。これは、私自身の業務にもたらした変化です。

カスタマイズした個別ソリューションの提供

以前は業務課題の提示やアドバイス、既製のツールの紹介が中心でしたが、今はAIを使って各企業の独自のニーズに合わせたGoogleスプレッドシートベースの簡易システムを短期間で開発し、提供できるようになりました。これにより、より直接的で効果的な解決策を提供することが可能になりました。

低コストで高品質なサポート

高額なソフトウェアや開発費用を必要とせず、AIとGoogleスプレッドシートを組み合わせることで、低コストながら高品質な業務改善ツールを提供できるようになりました。これは特に予算の制約がある中小企業にとって大きなメリットとなります。

迅速な対応と継続的改善

AIを活用することで、クライアントの要望にあわせたシステム開発、改善や機能追加を素早く行うことができます。これにより、環境の変化や新たなニーズに柔軟に対応できるようになりました。

業務プロセスへの深い理解と実践的サポート

簡易システムの開発を通じて、クライアントの業務プロセスをより深く理解し、より実践的なサポートを提供できるようになりました。単なる助言者ではなく、実際の業務改善のパートナーとして機能できるようになったのです。

まとめ

多くの中小企業にとって、デジタル化は依然としてハードルの高い課題です。

しかし、AI×Googleスプレッドシートの活用は、初期投資を抑えつつ、柔軟なスケーリングが可能なため、中小企業が活用できていないEXCELデータの価値を高め、競争力を大きく高める可能性を秘めています。

また、日頃から伴走的なサポートをする私自身がAIを活用した簡易システムの提供ができるようになれば、デジタル化への抵抗を減らし、スムーズな導入を支援できるシーンを増やしていきたいと考えています。

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