DePINって何?未来のインフラを変える革命的技術を徹底解説

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DePINとは、分散型物理インフラネットワークの略称です。

一見難しそうな言葉ですが、要するに「みんなで作り、みんなで使うインフラ」のこと。
あなたの家のパソコンが、世界中の人々のデータを守るデータセンターの一部になる。
車で通勤する道すがら、あなたの車が道路情報を集める重要なセンサーとなる。

そして、それらの貢献に対して、きちんと報酬が支払われる。

今まで大企業や政府が独占してきたインフラ整備の領域に、私たち一人一人が参加できるようになる革命的な仕組みが、DePIN(Decentralized Physical Infrastructure Network)と呼ばれる新しい技術です。

DePINの仕組み:ブロックチェーンが紡ぐ信頼の網

従来のインフラ整備といえば、莫大な初期投資と専門知識が必要でした。例えば、通信インフラを整備するには、全国に基地局を建設し、膨大なケーブルを敷設する必要があります。しかし、DePINはこの常識を覆します。

ブロックチェーン技術を基盤とするDePINでは、個人が持つ小さなリソース(例えば、家庭用パソコンの空き容量やWi-Fiルーターの余剰帯域)を集約して、大規模なインフラを構築します。そして、その貢献度に応じて、参加者に報酬が支払われるのです。

DePINの心臓部とも言えるのが、ブロックチェーン技術です。ビットコインで有名になったこの技術は、改ざんが極めて困難な分散型台帳システムを提供します。

例えば、あなたが自宅のWi-Fiルーターを使ってDePINの無線ネットワークに参加したとします。ルーターを通じて提供されたデータ通信量は、ブロックチェーン上に記録されます。この記録は、ネットワーク参加者全員で共有・検証されるため、不正な改ざんはほぼ不可能。つまり、あなたの貢献が正確に計測され、それに応じた報酬が確実に支払われる仕組みが整っているのです。

さらに、多くのDePINプロジェクトでは独自の暗号通貨(トークン)が発行されます。このトークンは、ネットワークへの貢献に対する報酬として配布されると同時に、プロジェクトの運営方針を決定する投票権としても機能します。つまり、積極的に貢献する人ほど、プロジェクトの未来に対する発言力を持てるのです。

DePINの具体例

DePINの概念は、すでにいくつかのプロジェクトで現実のものとなっています。その代表例を見てみましょう。

Filecoin

これは、世界中の人々のコンピューターの空き容量を集めて、巨大なクラウドストレージを作り上げるプロジェクト。2023年現在、約7エクサバイト(70億ギガバイト)もの容量が提供されています。家庭用パソコンやハードディスクの余剰容量を提供するだけで、Filecoinトークンを獲得できるのです。

Helium

これは、IoT(Internet of Things)デバイス向けの無線ネットワークを、一般家庭のWi-Fiルーターを使って構築するというもの。専用の小型デバイスを家に設置するだけで、近隣のIoTデバイスにネットワークを提供でき、その見返りとしてトークンが得られます。2023年時点で、すでに全世界に約100万台のデバイスが設置されており、スマートシティや農業IoTなど、さまざまな分野で活用されています。

Render Network

分散型のGPUレンダリングネットワークも注目です。3DCGアーティストや映画製作者が、世界中の一般ユーザーのグラフィックボードを借りて、高度なレンダリング作業を行えるプラットフォームです。ゲーミングPCを所有している人なら、寝ている間にPCを稼働させておくだけで、クリエイターの作品づくりに貢献でき、その見返りとしてトークンがもらえるのです。

Hivemapper

私の友人が実際にやっているのは、Hivemapperです。これは、分散型の地図作成プロジェクトで、まさに冒頭で想像した「車で通勤する道すがら、道路情報を集める」という光景を現実のものにしています。参加者は専用のドライブレコーダーを車に取り付けるだけで、走行中に収集された映像データが自動的にアップロードされ、最新の地図データとして反映されます。新しくできた道路や閉鎖された道路の情報がリアルタイムで更新され、その貢献に応じてトークンが支払われるのです。これは、まさに日常の行動が社会貢献になり、同時に収入源にもなるという、DePINの理念を体現したプロジェクトと言えるでしょう。

DePINがもたらす参加型経済の幕開け

DePINの登場は、単なる技術革新を超えた、社会経済システムの根本的な変革をもたらす可能性を秘めています。

まず、経済の民主化が進むでしょう。今までインフラ整備の恩恵を受けるだけだった一般市民が、インフラ提供者として収益を得られるようになります。例えば、Filecoinのストレージ提供者は年間5〜15%の利回りを得られると言われています。また、Heliumのホットスポット運用者は、平均して月50〜100ドルの収益を上げているそうです。Hivemapperの参加者も、日々の通勤や外出がそのまま収入につながるという、新しい働き方の可能性を示しています。

次に、持続可能性の向上も期待できます。DePINは既存の遊休資産を有効活用するため、新たなリソース投入を最小限に抑えられます。例えば、Render Networkは個人のPCの余剰演算能力を活用することで、専用のレンダリングファームを建設する必要がなくなり、結果として環境負荷の軽減につながります。Hivemapperも、既存の車や人々の移動を活用することで、専用の地図作成車両を走らせる必要がなくなり、効率的なデータ収集を実現しています。

さらに、イノベーションの加速も見込まれます。DePINの特徴であるオープンで分散型のシステムは、新たなアイデアや技術の導入を容易にします。例えば、Heliumのネットワークは、スマートシティや農業IoTなど、様々な分野での革新的なアプリケーション開発を促進しています。Hivemapperのリアルタイムな地図データは、自動運転技術の発展や都市計画の最適化など、幅広い分野でのイノベーションを支える可能性を秘めています。

DePINの課題と可能性

もちろん、DePINにも課題はあります。技術面では、ネットワークの拡大に伴う処理速度の低下や、異なるDePINプロジェクト間での相互運用性の確保などが挙げられます。また、法規制の面でも、既存の法体系では想定されていない新しい仕組みのため、適切な規制の枠組み作りが必要です。特に、Hivemapperのような個人情報やプライバシーに関わるデータを扱うプロジェクトでは、データの取り扱いに関する厳格なガイドラインの策定が求められるでしょう。

しかし、これらの課題を乗り越えれば、DePIN市場は大きく成長すると予測されています。調査会社のデータによると、DePIN市場は2028年までに3.5兆ドル(約350兆円)規模に成長するとされています。これは日本のGDPの半分以上に相当する巨大な市場です。

さらに、DePINの応用範囲は今後さらに広がっていくでしょう。例えば、エネルギー分野では、個人の太陽光パネルで発電した余剰電力を隣人と直接取引する「P2P電力取引」の実現に向けた実証実験が進んでいます。また、モビリティ分野では、個人所有の電気自動車充電器を共有する分散型充電ネットワークの構築が検討されています。

あなたもDePIN革命の一員に

DePINは、私たちの暮らしを大きく変える可能性を秘めています。今まで「ユーザー」でしかなかった私たちが、インフラの「提供者」にもなれる。そんな未来が、すぐそこまで来ているのです。

もしかしたら、近い将来、こんな世界が実現するかもしれません。朝起きると、夜の間にパソコンが稼いでくれたトークンで朝食のパンを買う。通勤中のドライブでHivemapperを通じて道路情報を提供し、その報酬で昼食を食べる。帰宅後、家の屋根のソーラーパネルで発電した余剰電力を隣人に販売する。

そんな「参加型」の社会。みんなが少しずつ貢献して、みんなでインフラを作り、その恩恵をみんなで受ける。そんな未来は、決して遠くありません。

DePINはまだ始まったばかりの技術です。だからこそ、今から注目して、理解を深めておくことが大切です。そして、興味を持ったら、実際に何かのプロジェクトに参加してみてはいかがでしょうか。あなたの参加が、未来のインフラを作り、新しい経済圏を育てていくのです。さあ、DePIN革命の扉を開いてみましょう。きっと、新しい世界が広がっているはずです。

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