「うちもAI入れないといけない」
そういう相談をよく受けます。ただ、少し話を聞くと、たいていの場合、課題はAIの手前にあります。
誰が何をしているかが分からない。うまくいった理由も、失敗した理由も、言葉になっていない。現場と経営の間に、訳されないままの現実が積み上がっている。
この状態にAIを入れても、何も変わりません。
AIが扱えるのは、言葉になったものだけ
AIは、渡されたものしか処理できません。業務の流れも、判断の基準も、役割の定義も、言葉になっていなければ渡しようがない。AIにとって、テキストになっていないものは存在しないのと同じです。
だとすれば、AI活用の前提として要るのは、組織の現実を言葉にする力です。誰が何を担っているか。成果とは何で、どこで測るか。現場でどんな判断が行われているか。経営から見えていないことは何か。
これを言葉にする作業は、そのまま経営管理でもあります。
言語化には、担い手の違う4つの層がある
ひとくちに言語化と言っても、層によって中身も担い手も変わります。
- 経営:なぜこの事業をやるか、何を目指すか → 経営者にしか書けません
- 業務:どの部門のどの業務を任せるか、役割と成果の定義 → 経営者・管理職
- 作業:繰り返しの作業をどう手順に落とすか → 素材は現場が持ち、言葉にするのは推進役
- 指示文:1回のプロンプトをどう書くか → 道具の側に埋め込み、社員には書かせない
見落とされやすいのは下の2つです。
作業の中身を知っているのは現場ですが、それを言葉にして道具に落とすところまで現場に求めると、たいてい止まります。毎日やっていることを言葉に戻すのは、それ自体が訓練の要る作業だからです。
指示文にいたっては、社員に求めるべきではありません。「全社員がプロンプトを書けるように」を目標にした会社は、途中で止まります。慣れる速さが違いすぎて、追いつけない人が置いていかれるだけです。目指すのは逆で、書かなくても使える道具を会社が用意し、社員はそれを使う状態です。
経営者がやることは、変わっていない
逆説的ですが、経営者のやるべきことは以前と同じです。現場を理解する。役割を決める。成果の基準を持つ。
違うのは切実さのほうです。これまでは、定義が曖昧でも優秀な人が読み替えて動いてくれました。AIはそれをしてくれません。
言語化できていない組織に、AIは優しくないのです。
作業レベルの言語化の手順は、AI活用マップ本編で扱っています。
