「AIで仕事がなくなるのか」。この問いを、過去の実例から考えてみます。
消えた仕事は、3つのパターンに分かれる
職業ごと消えたもの。 電話交換手は、かけ手と受け手を手作業でつなぐ職業でした。自動交換機の普及とともに減り続け、1979年に役目を終えます。ただし話には続きがあって、「電話で人が応対する」需要は消えず、受付や電話代行、コールセンターが生まれました。そのコールセンターが、いま音声AIに置き換わり始めています。
職業は残り、作業だけ消えたもの。 駅で切符を切る仕事は、自動改札の普及でなくなりました。でも駅員という職業は残っています。消えたのは業務の中の1工程でした。
形を変えて戻ってきたもの。 飛脚は近代郵便の登場でなくなりましたが、「届けてほしい」という需要は消えていません。いまは配達員や配送ドライバーがいます。消えたのは「人が走って運ぶ」というやり方だけでした。
3つに共通するのは、なくなったのが手間がかかるから人がやっていた作業だけだという点です。職業の名前が消えたのではありません。
ただし、今回は速い
世界初の自動改札機が動いたのは1967年、阪急北千里駅でした。ところが関東では複数社にまたがる乗車券の処理が壁になり、JR東日本が東京100km圏に本格導入したのは1990年です。技術ができてから現場が変わるまでに23年かかりました。
ただ、AIには設備の入れ替えも工事も要りません。ソフトウェアなので、置き換わる速さは比べものにならないはずです。23年かかったという事実は、「まだ大丈夫」の根拠にはなりません。
今回は、頭を使う仕事に来る
これまで安くなってきたのは、運ぶ・作る・つなぐ・記録するといった、手を動かす側のコストでした。
AIが安くしているのは、考える手間です。調べる、まとめる、書く、案を出す、比べて選ぶ。「頭を使う仕事だから安全」と思われてきた側に来ます。
とはいえ、ここでも消えるのは作業です。だから立てるべき問いは「自分の職業は残るか」ではありません。自分の仕事のどの作業が、考える手間がかかるという理由だけで手元にあるのかです。
重ならない場所へ移り続ける
AIと正面から競う選択肢はありません。疲れず、24時間止まらず、同じ品質で出し続ける相手と量を競っても勝てません。だから、重ならない場所へ移ることになります。
移り先は4つあると考えています。AIと一緒に働く。AIを制御する。AIを教える。AIが苦手なところを引き受ける。
ただし、どれも永続しません。 いちばん早く縮むのは、おそらく「教える」です。AIの使い方を教える役目は、AI自身がいちばんうまくやれるからです。逆に「苦手なところを引き受ける」——責任を負う、関係をつくる、現場に立つ——は、身体と制度の壁がある分、置き換わるのに時間がかかります。それでも永久に安全ではありません。
つまり、重ならない場所は毎年その形を変えます。大事なのは、どこに移るかより、移り続けられるかのほうです。いい場所を見つけて座り込んだ時点で、また追いつかれます。
▶ AI活用マップ|コラム:AIによって消えるのは「職業」ではなく、「作業」
前編にあたる「AIが壊すのは思考のコスト」も、AI活用マップで公開しています。
