先輩の独立診断士の教え
資格を持っているだけで、すぐに仕事ができるとは限りません。診断士資格に合格して以来、資格取得と実際の診断士の仕事の間には、技術・知識・経験などの面でギャップを感じることがたびたびありました。このギャップを埋めるために、診断士資格取得時からたくさんの診断実務をこなすことを意識してきました。独立後の仕事でも、多くの経営者にお会いしコミュニケーションを取ることに重点を置きました。さらに、経営者にお会いするために、先輩の独立診断士に同行してお手伝いをしながら勉強させていただいたりしています。
『独立すると、悪いところを誰も指摘してくれない』という話も良く耳にします。幸いなことに私のまわりには、ご指導くださる先輩方が多く、たくさんの学びを受けています。先輩診断士からの学びの一つに『(A)当たり前を(B)馬鹿にせず(C)ちゃんとやる』という言葉がありました。先輩診断士が私に見せてくれたメッセージ『経営のABC』です。付箋紙に書かれたそのメッセージは、毎日目に入るようにアルミ製の小物入れの内側に貼ってありました。
独立診断士として最前線で活躍するために必要なこととして考えていたことは、知識の補充のために本を読んだり、スキルアップのために勉強会に参加したりしながら、経験を積み重ねていくことだろうと考えていました。おそらく要所要所では必要なことで、影で努力されていることと思います。しかし、本当に大切なことは、知識でもスキルでも経験でもなく、「当たり前を馬鹿にせずちゃんとやる」ことなのだと、メッセージそのものに加え、先輩診断士の所作にも心を動かされました。
コミュニケーションの失敗
仕事のなかで失敗を感じることの一つにコミュニケーションがあります。ITツールに慣れ親しんだ私にとって、特に欠かせないコミュニケーションツールがEメールです。かつての職場でも、社内やプロジェクト内、顧客とのコミュニケーションをEメールで済ませることが多く、また忙しい相手の時間を拘束することなく都合にあわせて読んでいただけることから、今でもEメールを多用します。
しかし、独立し、「慣れ親しんだ会社/顧客と慣れ親しんだやり方で仕事をする環境」から「個人レベルでのお付き合いが多くなる環境」へと変わったことで、仕事の基本である対人能力が不足していることに気付かされました。
Eメールは相手の顔が見えない一方的なコミュニケーションツールであり、シンプルに伝えようとするあまりに言葉が少なくなり、冷たい印象を与えてしまうことがありました。また、表現が不十分であったり、誤解を招く使い方をしたり、意図しない受け止め方をされたりと、少ない言葉で細かなニュアンスまで十分に伝えきることができずに、相手に不快な思いをさせてしまうことがありました。Eメールは、多くのメリットがある反面、気をつけて扱わなければ信用を失いかねないとても危険なツールだと感じています。
自力で受注したコンサル案件
現在、独立して10ヶ月が経ちました。独立1年目を振り返ってみると、IT研修の講師を勤めながら、自治体や商工会議所から依頼された経営診断、先輩診断士に付いて支援業務のお手伝い、補助金申請などの支援、マーケティング調査といった仕事をこなしてきました。
最近、ようやく自力でコンサル案件を受注することができました。自力とはいっても、数名で提案した結果として受注できた案件です。しかし、先輩診断士から仕事を紹介していただくスキームから、私がリーダーとして携わり自らの手で案件を受注できたことは、一歩前へ進むことができたと実感できる経験です。
きっかけは、知人税理士のお客様が新規事業を検討しているとご紹介を受け、新規事業の企画提案の機会をいただきました。2ヶ月ほどのヒアリング・調査・検討を経て提案した結果、新規事業として採用が決定されました。また、クライアントの社長からは「感銘を受けました」「提案結果に満足しています」「提案の実施が決まりました」「新規事業に密に関わっていただきたい」といった内容のお手紙をいただきました。案件として受注できたことも嬉しかったのですが、やはり経営者に評価され感謝されたことの方が嬉しく、これぞ診断士冥利に尽きる感動を味わいました。
晴れて当案件は、提案案件から事業スタートに向けて継続的な支援案件へと進展しました。現在は、新規事業にあわせて新会社設立、金融機関からの融資が決まり、事業開始に向けて動き出しています。新規事業の実現、さらには事業成功に向けて、これからが支援案件の始まりであり全力で貢献をしていく所存です。
独立診断士としてようやく一歩踏み出せたかなと私自身が成長を感じ始めた頃、昨年産まれた娘は生後9ヶ月となり、つかまり立ちができ、赤ちゃん言葉を発するようになりました。目に見えて毎日成長を実感できる子どもと比較すると、私の歩みはのろいものです。しかし、この1年間で多くの経営者や先輩診断士と接し、案件を一つ一つこなしていくにつれ、着実に経験値が上がっていることを感じています。
私の奮闘記はここまでとなります。これからも『ありがとう』の初心を忘れず、ひとつひとつ果敢に挑戦し成長をしていきたいと思います。いつかまた成長した姿をお見せすることができるように、これからも奮闘を続けます。
ご精読、ありがとうございました。