独立や開業をする際に最初にぶつかる壁が、良い商品やサービスを考えて世の中に出してみたものの、なかなか売れないということです。
ここで「売れない」という言葉に着目してみます。
売れないのは「商品そのものに問題があって売れない」か、「売れる商品なのに、今は売れていない」か、2つの意味で捉えることができます。
見込み顧客10,000人に積極的に営業してみたものの1人も買ってくれないのであれば、「商品そのもの」に問題がある可能性が高いです。
しかし、多くの方は、後者の「売れる商品なのに、今は売れていない」であると感じています。
その原因として、想定顧客を間違っていたり、伝え方が悪かったり、そもそも知られていなかったりするせいで売れていない、という状況になっているケースがほとんどです。
では、どうすれば売れるようになるのでしょうか?
そこで重要になってくるのが、「販売促進」です。
販売促進とは、商品(サービス)を顧客に知ってもらい、たくさん売るための施策・活動のことです。
マーケティング用語で、AIDMAやAISASという言葉があります。
消費者がモノやサービスを知ってから買うに至るまでの心理的・行動的なプロセスを表す言葉です。
AIDMA | |
---|---|
Attention(認知) | 商品やサービスを知る |
Interest(興味) | 興味・関心を持つ |
Desire(欲求) | 欲しいと思う |
Memory(記憶) | 次に見た時に思い出せるように記憶しておく |
Action(購入) | 購入する |
AISAS | |
---|---|
Attention(認知) | 商品やサービスを知る |
Interest(興味) | 興味・関心を持つ |
Search(検索) | インターネットで検索する |
Action(購入) | 購入する |
Share(共有) | SNSなどにシェアする |
このようにお客様が商品を購入するまでにはいくつかのステップがあります。
興味を持って欲しいと思っている間、競合と検索・比較されている間に、あなたが選ばれるために、そのステップごとに必要な情報を発信していくことが必要になります。
創業前や創業当初は、商品やサービスを知られていない(無認知)ことがほとんどですので、まず対象となる顧客に、存在や価値を知って(認知)もらわなくてはなりません。
そして、認知した人の一部に利用していただけ、さらに利用者の一部から継続的に利用してもらうことになります。
したがって、顧客に伝えるタイミング(A アテンション 顧客の注意を引く)は、
(1)無認知の状態から認知されるタイミング。
(2)認知された状態から利用・購買に至るタイミング
(3)一度利用していただいた方に、また利用していただきたいタイミング
の3回あり、それぞれで行う販売促進施策を考えていくことが必要です。
(1)認知されるための販売促進施策
創業前、もしくは創業間もない場合は、まず顧客に認知されなくてはなりません。
せっかく創業したのだから、できるだけたくさんの人に知ってもらいたい、と思うことでしょう。
ただし、掲載するメディアを目にする人数に比例して高額な掲載費用がかかってきます。
例えば、練馬駅近隣に店舗を構える、出産後まもないママ向けの骨盤矯正サロンが認知を図ろうとするケースを考えてみましょう。
顧客が出産後まもないママだからといって、子育て情報の全国誌へ数十万円もする広告を掲載することはしないでしょう。
大阪や博多に住むママが雑誌を見て、練馬の店舗に来店する可能性は限りなく低いからです。
同じように、主要放送局で15秒のTVCMを1回流そうとすると100万円程度かかる、と言われています。
このように日本全国の人に知ってもらうには、莫大なお金がかかってしまいます。
この事例のように実店舗を出店している場合、商圏(顧客の行動範囲)は狭くなります。
そのため、近隣にだけ配布されていて、顧客が目にしそうな区報、地域の生活情報紙やフリーペーパーなどに広告を掲載するほうが、来店への期待が高くなります。
また、たった1度の販売促進で認知されるとは限りません。
ポストには毎日たくさんのチラシが入ってきますので、チラシを見ないで捨ててしまうケースが十分に考えられます。
一度見ただけでは記憶に残らないかもしれません。
また、HPであっても作ってすぐにアクセスが集まるものではありません。
ですから、顧客獲得のためには、継続的なアプローチを怠ってはいけません。
—————————————
■事例 練馬駅近隣に教室を構える高校進学塾
開業してはじめての冬期講習に向けて、まずは近隣地域の学生(家庭)に認知されることが必要です。
冬期講習生獲得のために、指定の地域への新聞折り込みチラシを実施することに決め、デザインから配布までを一括して業者に依頼をしました。
早い時期から冬期講習を検討する家庭や、チラシを見ずに捨てられるなどのことも考え、同一地域に初秋より10週にわたって継続的に新聞折り込みを実施しました。
—————————————
(2)利用してもらうための販売促進施策
常連さんにまた来てもらうことよりも、最初に購入・利用してもらうことの方が大変です。
利用者の視点で考えてみると、何年も通っている行きつけの美容室を変えるときには、どんなお店か、スタッフがどういう人かわからない状態なので、最初にお店に入るときは緊張しますし、不安になりますよね。
これは、どのような商品・サービスであっても同じです。
ですから、最初に購入・利用してもらうための工夫を施し、お客様の不安を解消させて、購入に繋げることが必要となります。
そこで、安易に競合他店よりも大きく価格を下げてしまったらどうなるでしょうか?
来店や購入に繋がる可能性は高くなりますが、効率的に運営をしている大企業に価格競争で敵うはずもなく、経営が苦しくなることは目に見えています。
そこで、顧客が初めて利用する際に困惑せずに、スムーズに利用してもらえるような「あなたなりの工夫」が必要なのです。
例)本格的な申込をする前に気軽に試せる「体験利用」がある
例)窓ガラスなどから店内の雰囲気がわかる
例)料金プランがわかりやすく表示されている
例)HPなどでスタッフの顔写真や気さくな自己紹介が掲載されている
例)メールやLINEなど電話以外でも気軽に連絡しやすい
例)よくある質問がQ&Aにまとまっており、事前に不安を解決できる
例)現金以外にも電子マネーやクレジットカードのように多様な支払いができる
例)今なら・・・限定○名のように希少価値がある
例)クーポン、値引き、ポイント、などの特典でお得感を出す
例)車椅子などでも移動できるバリアフリー化がされている
例)駐車が苦手な女性でも車を停めやすい場所にある
これらはほんの一例として挙げてみました。
あなたの商品を手にとってもらいやすく、サービスを利用してもらいやすくするためには、どのような工夫がよいか考えてみてください。
(3)リピートしてもらうための販売促進施策
何もしなくても自然にリピートしてくれるような常連になってくれるならいいのですが、お客様が利用したこと、利用してよかった気持ちを忘れてしまうかもしれません。
競合店の提案になびいてしまう可能性もあります。
そこで、あなたの商品やサービスを思い出してもらうために、適切なタイミングで定期的にアプローチをし続けていくことが重要になります。
—————————————
■事例 地域密着型の町の電気屋のアフターフォロー
町の電気屋は、店頭で電化製品を売っているだけではありません。
特に顧客管理システムを活用している電気屋では、過去の購入金額などから顧客のランク付け(A・B・C・D)をしています。
優良顧客(Aランク)には、定期的に自宅に訪問して、御用聞きのようなお困りごとの用命を受けて、顧客との接点を持ち続けています。
そして、メーカーの商品パンフレットや独自サービス案内状の郵送物をランク別にお届けし、反対に引っ越しなどで消息が不明になってしまいお店からのアプローチが難しいDランクの顧客には、お店側からは何もしない(販促費の削減)方針を決めています。
また、いつ何を買ってくれたか、をすべて顧客管理システムに入力し確認することができますので、訪問する(来店した)お客様ごとに、過去の取引履歴を把握し、個別に提案して販売に結びつけています。
—————————————
このような施策をうつためには、顧客情報を入手することが必要です。
そして、顧客情報を入手するためには、会員カードやスマホアプリ、ポイントカード、顧客カルテ、お客様アンケートなどのような、顧客情報を入手するなんらかの手段(ツール)が必要です。
理由なく、住所などの連絡先を教えてほしい、と言って教えてくれるお客様は少ないので、顧客情報を教えてくれたことによるメリット(特典)を提供する、といった工夫をしましょう。
また、上記電気屋の例のように、顧客管理を行うためにはITを活用することも重要です。顧客情報を紙のまま残しておくと、探すのも大変、保管する場所が必要ですから、Excelのようなパソコンソフトに入力したり、顧客管理システムと呼ばれるITサービスを利用したりしましょう。
—————————————
■事例 美容室のアフターフォロー
美容室に行った数日後に、「先日はご来店ありがとうございました。気に入っていただけましたでしょうか?」のような内容のはがきをもらった経験はありませんか?
サンクスDMやサンキューレターと呼ばれるお礼状です。
サービスの良さをアピールするとともに、行ってよかったと思わせ、お客様の印象に残し次も来店してもらえるようにする基本的な施策となります。
また、同じ美容室から、数ヶ月後に「○○が気になる頃ではありませんか?」のようなはがきが届くことがあります。
美容室の場合、POSシステムで顧客情報を管理していますから、最後の来店から○日(○ヶ月)経ったお客様に一斉にDMを出す、というような施策が可能となります。
DMが届くことで、当店の良さを思い出してもらい、再来店に繋げることが目的です。
—————————————