指示しなくても動くAIを用意すると、1人で何本もの仕事を同時に走らせられます。議事録をまとめる担当、メールの下書きを作る担当、顧客情報を整理する担当。それぞれが勝手に進みます。
理屈のうえでは、処理能力が何倍にもなるはずでした。ところが実際にやってみると、妙なことが起きます。
AIを増やした結果、詰まるのは自分になるのです。
詰まりの正体は、頭で追える数ではなかった
最初は、頭で把握しきれる数を超えたからだと考えました。実際、自分の手で細かく動かせるAIエージェントは10〜20体が限度で、それ以上は条件をあらかじめ決めておき、判断そのものを自動化の側に寄せています。私の場合、エージェントの数は30体前後、スキルは100個近くまで積み上がっています。
ただ、体数を絞っても詰まりは解消しませんでした。原因は、「これでいいか」を確かめる作業そのものが、一度に1つずつしかできないことです。AIエージェントを何体並べても、確認は必ず1件ずつ。並べられる数と、確認できる数は、そもそも別の話でした。
AIは10でも30でも並べられます。ただ、指示を出し、結果を見て、良し悪しを判断する入口は1人しかいない。車線を10本に増やしても、料金所が1つなら手前で詰まるのと同じ構造です。増やすほど、この入口の狭さが目立ってきます。
問われるのは、使い方より分担の設計
ここから分かるのは、これからの制約はAIの操作が上手いかどうかではない、ということです。
仕事をどこで切るか。どの部分を渡し、どこを自分が握るか。自分が判断しなければならない場面を、どれだけ少なく、どれだけ重要なものだけに絞れるか。
これができている人は、AIが増えても回せます。できていない人は、増やすほど確認待ちの山に埋もれます。差がつくのはプロンプトの上手さではなく、仕事の切り分け方のほうです。
詰まりを取ると、本来の仕事が戻ってくる
裏を返せば、切り分けができたとき、人の側には人にしかできない仕事だけが残ります。方向を決める、判断する、責任を引き受ける。
AIを増やすこと自体が目的ではありません。手直しすべきは、もっと速いAIを探すことではなく、料金所になっている自分の仕事の組み方のほうです。
▶ AI活用マップ|コラム:AIを増やすほど、人間が渋滞する
複数のAIを束ねて育てる考え方は、AI活用マップ本編で扱っています。

