AIが便利になってくると、目の前の仕事を見て「これも任せられそうだ」と考えたくなります。ただ、この順番だと事故が起きます。
先に決めるべきなのは、その仕事をどう組み立てるかのほうです。組み立ててから、一部をAIに渡す。AIありきで眺めると、渡してはいけないものまで渡してしまいます。
私は新しい依頼を受けたとき、頭の中で3つに仕分けています。
1つ目:仕組みに流す仕事
ここは2つに割れます。分け方を間違えると、いちばん危ない場所でもあります。
金額の計算、税額、期限の管理、データの集計。この手の「1円もずれてはいけない」作業は、AIではなくプログラムにやらせます。AIは確率で答えを組み立てるので、たまに外します。100回中99回合っていても、外した1回が請求書だったら取り返しがつきません。
一方、要約する、仕分ける、文章の叩き台を作る。この辺りは多少ぶれても後から直せます。ここは迷わずAIに渡して構いません。むしろ人が手を出すと時間が溶けます。
2つ目:下書きだけ任せる仕事
相手の状況を踏まえる必要があり、外すと損失が出る仕事です。提案書、値付け、返信の文面。
ここはAIに下書きを作らせて、最後は自分が判断します。「下書きまで」と線を引いておくことが大事で、この線を越えて丸ごと任せると、後で述べる事故が起きます。
3つ目:手放してはいけない仕事
相手との関係、責任の引き受け方、まだ言葉になっていない現場の勘。取引先が「この人だから頼んでいる」と感じている部分です。
ここをAIに任せて人間らしく振る舞わせるのは、自分の値打ちを自分で下げる行為です。触らない判断が要ります。
事故は、2つ目を1つ目に入れたときに起きる
いちばん多い失敗は、本当は下書き止まりにすべき仕事を、任せきりにしてしまうことです。
出てくるものの質が低いわけではありません。むしろ体裁は整っています。ただ、その人らしさが抜ける。読んだ相手は理由を言葉にできないまま、少しずつ距離を置くようになります。目に見える失敗ではないので、気づいたときには手遅れです。
私の仕事でも同じ罠があります。「提案がなんとなく一般論っぽくなった」と自分で気づける仕掛けを持っているかどうかが、分かれ目になります。
空いた時間の行き先を決めておく
もうひとつ、自分に課している問いがあります。「これを渡して空いた時間で、何をやるのか」。
答えが「次に自動化できるものを探す」だけになっていたら、赤信号です。空いた時間が3つ目の仕事——深い対話、先を考える時間、学び直し——に向いているか。効率化そのものが目的になった瞬間、順番が入れ替わります。
何を任せるかを決めるのは、裏返せば、何を手放さないかを決めることです。
▶ AI活用マップ|コラム:その仕事、AIに渡す前に3つに分ける
組織として任せる範囲を決める方法は、AI活用マップ本編で扱っています。

