「AIに聞いても、教科書に書いてあるような答えしか返ってこない」
経営者の方から、よくこの話になります。試してはみたものの、ビジネス書に載っているような一般論が返ってくるだけで、自社の役には立たなかった、と。
私も、最初は同じ感想でした
ChatGPTを触り始めたのは2022年の年末です。正直なところ、期待していたほどではありませんでした。当時は、もっと性能のいいモデルが出れば解決するのだろうと考えていました。
実際に手応えが変わったのは、2025年の秋です。きっかけはモデルの乗り換えではありませんでした。自分の会社の情報を、きちんと渡すようにしただけです。同じAIが、まるで別物のような答えを返してくるようになりました。
AIが知らないのは、あなたの会社のこと
考えてみれば、当たり前の話です。
たとえば「見積書を作って」とだけ頼んだとします。返ってくるのは、どこの会社でも通用する体裁の見積書です。ところが、自社の標準的な粗利率、この業界の値引きの相場、その取引先との過去のやりとり——こうしたものを添えて頼むと、出てくるものが変わります。値引き幅の妥当性まで踏まえた案が返ってくる。
この「添えるもの」を、コンテキストと呼びます。データそのものだけでなく、それをどう読むべきかという判断の前提まで含んだものです。
新しく入った社員に、商品も顧客も方針も伝えないまま「売上を伸ばす案を出して」と頼んだら、どうなるでしょうか。返ってくるのは、どこかで読んだような一般論です。AIに起きていたのは、それと同じことでした。
モデル選びに時間を使うより、効くこと
「今はどのAIが一番いいのか」「どんな指示文が効くのか」。この手の情報は毎週のように出てきますし、追いかけたくもなります。
ただ、渡す材料が整っていない状態でモデルだけ乗り換えても、伸びしろは限られます。逆に材料さえ整っていれば、1世代前のモデルでも実務には十分間に合います。しかも、整えた材料はどのAIに持っていっても効きます。乗り換えのたびに作り直す必要がない。投資として、こちらのほうが割に合います。
最初にやるのは、棚卸しです
これまでは、社内の情報が多少ばらついていても、人同士のやり取りで補えていました。「あの件、いつもの感じで」で通じていたわけです。AIに仕事を任せるとなると、そうはいきません。
だから最初の一歩は、ツールを選ぶことでも、指示文を覚えることでもありません。自社の判断基準や手順が、どれだけ言葉になっていないか。そこを一度、正直に見てみることです。
なぜこの点に気づけないのか、という部分は、AI活用マップのコラムで掘り下げています。
会社の情報を実際にどう渡すかという手順は、AI活用マップ本編で公開しています。無料で読めます。

