AIは「使いこなす」より「仲良くなる」ほうが早い

「AIを使いこなす」という言い方が、どうも自分の実感に合いません。私も口では使うのですが、毎回わずかに引っかかります。

相手が反応しない前提の言葉

使いこなす、という言葉は、ドリルや表計算ソフトに向けるものです。こちらの操作だけで結果が決まり、相手の状態は関係ない。そういう関係を前提にしています。

ところがAIは、こちらが何をどう伝えたかで、返ってくるものが変わります。前提を共有するほど噛み合っていく。この感じは、道具に対するものではありません。むしろ、中途採用で入ってきたばかりの、能力は高いけれど自社のことをまだ知らない人に近い。

不自由の正体は、制限のほうではなかった

そう思うようになったきっかけは、小さな引っかかりでした。

AIには1日に使える量の上限があります。あるとき、その制限に対して窮屈さを感じている自分に気づきました。ただ、よく考えると窮屈さの出どころは制限ではありませんでした。自分がAIに向かって、用件しか打っていなかったことのほうです。

背景も、迷っていることも、どこが不安なのかも伝えない。用件だけ投げて答えだけ受け取る。人間の同僚には絶対にしない接し方を、画面の向こうにだけしていたわけです。悪気があったのではなく、単にその習慣がなかっただけでした。

通じ合う関係は、片側だけでは作れない

長年の取引先や、気心の知れた社員を思い浮かべてください。短い言葉で通じるのは、こちらが相手を知っていて、なおかつ相手もこちらを知っているからです。片側だけ詳しくても、ああいう関係にはなりません。

AIとの間でも同じことが起きます。こちらがAIの癖をつかむ。同時に、こちらの判断基準やその日の状況をAIに見せておく。両方向がそろって初めて、短い指示で意図が通るようになります。

やることは拍子抜けするほど簡単で、会話のところどころに一言足すだけです。「正直まだ迷っている」「これは思ったよりうまくいった」。絵文字でも構いません。自分の状態を見せる、それだけです。

相手として扱うと、渡すものが変わる

面白いのは、AIを一緒に働く相手だと思った瞬間から、こちらの渡し方が勝手に変わることです。

分かってもらおうとするので、背景を先に説明するようになる。命令ではなく相談の形になる。結果として渡す材料が増え、返ってくるものの精度が上がります。

精神論をしているつもりはありません。仕組みの設計に入る前に、まず正直に話しかけてみる。順番としては、そこからで構わないと思っています。


AI活用マップ|コラム:AIと「仲良くなる」という発想

AIに前提を持たせる指示書の作り方は、AI活用マップ本編で扱っています。