AIが壊しているのは「考える手間」のコストだ

技術が世の中を変えるとき、共通して起きていることがあります。それまで高くついていた何かが、急に安くなることです。

並べてみると、順番が見えてきます。

  • 蒸気機関が安くしたのは、力を出すこと
  • 電気と工場が安くしたのは、たくさん作ること
  • コンピュータが安くしたのは、記録して計算すること
  • インターネットが安くしたのは、遠くへ届けること
  • スマートフォンが安くしたのは、いつでも取り出すこと

では、AIは何を安くしているのか。考える手間です。

人の内側に、初めて手がかかった

白紙から企画のたたき台を出す。分厚い資料を読んで論点を絞る。いくつかの案を条件に照らして並べ替える。

どれも「これは人が頭を使うしかない」と思われてきた工程です。ここに機械が入ってきたのは、今回が初めてです。

先ほどの並びをもう一度見ると、安くなってきた対象が、体の外側から、肉体、情報、そして頭の中へと、少しずつ人間の内側に寄ってきているのが分かります。AIに対する怖さも期待も、たぶんここから来ています。いちばん人間の領分だと思っていた場所だからです。

小さい会社ほど、恩恵が大きい

考える手間が安くなると、これまで人数がいないとできなかったことが、少人数でも成立するようになります。

企画部門がない会社でも、市場調査から企画書の形にするところまで一人で回せる。広報担当を置けない会社でも、大手と同じ土俵の発信ができる。かつては人と金を持っている側だけの特権でした。

そして、この手の変化は決裁の速い組織から先に効きます。何段階も稟議を上げる会社より、社長がその場で「やってみよう」と言える会社のほうが、明らかに動き出しが早い。中小企業に向いている変化だと考えている理由は、ここにあります。

問いを立て直す

そう考えると、「AIを学ぶべきか」という問いはもう成立していません。電気を引くべきか、と聞いているのと同じ位置にあります。

問うなら、自社のどの工程で使うか、どこまで任せて、どこから自分で見るか。そちらのほうです。


AI活用マップ|コラム:AIが壊すのは、「思考のコスト」

歴史の流れの中で現在地を確かめる話を、AI活用マップで公開しています。