前回、AIの答えが浅いのは渡している材料が足りないからだ、という話を書きました。今回はその逆です。
矛盾しているようですが、実際に手を動かし始めた人だけがぶつかる、次の壁の話になります。
「とりあえず全部読ませる」で、答えが鈍る
材料が大事だと聞くと、真面目な方ほどこう考えます。手元にある資料を、片っ端から読ませればいい、と。過去3年分の議事録、顧客名簿、関係しそうな企画書。多いほど賢くなるはずだ、という発想です。
ところが、答えの質はむしろ落ちます。
私自身、以前これをやりました。ある会社の販促を考えるのに、過去のやり取りを丸ごと読ませたのです。返ってきた案には、2年前にやめたはずの施策が混ざっていました。AIから見れば、それも同じ重みの「社内の事実」でしかなかったわけです。
鈍る理由は2つあります
1つは、いま関係のない材料が判断を濁らせること。先ほどの例のように、古い方針や別案件の事情に引っ張られて、的外れな一般論に寄っていきます。
もう1つは、効く材料が埋もれることです。本当に見てほしい判断基準が1枚あっても、100枚の中に紛れ込ませたら、探し出してもらえません。人間の会議で、机の上に資料を10冊積まれた状態と同じです。
AIが一度に見られる量には上限があります。その枠を全部で埋めてしまえば、肝心なものを置く場所がなくなる。だから選ぶしかありません。
腕が出るのは、捨てるほうです
ここが面白いところで、力の差は「何を入れるか」ではなく「何を外すか」に出ます。
資料を集めるのは、誰でもできます。時間さえかければいい。一方、集めた中から今日の判断に効かないものを外す作業は、その仕事の中身を分かっている人にしかできません。外注もできない。
経験上、うまくいっているときほど渡している材料は少なく、指示文も短いです。逆に、長々と条件を書き足しているときは、たいてい何かがずれています。文章を足す前に、材料を減らせないか見たほうが早い。
「9割」と言った直後に逆のことを書く理由を、AI活用マップのコラムで説明しています。
▶ AI活用マップ|コラム:コンテキストは、盛ればいいわけじゃない
選び方と渡し方の手順は、AI活用マップ本編で公開しています。

