先日、あるAI活用セミナーの受講者が書いた投稿を目にしました。
要約すると、こういう内容です。自分もいくつかのAIに料金を払って使い分けている。だから並のレベルではないつもりでいた。ところが会場で紹介された使い方の幅を見て、自分との開きに愕然とした。しかも同じ内容を何百人もが同時に聞いている——。
この焦りには根拠があります。ただ、何が差なのかは切り分けておいたほうがいい。
他人の数か月分と、今日の自分を比べている
壇上で話される内容は、実務に当てはめては失敗し、直してきた数か月分を1時間に圧縮したものです。うまくいかなかった過程は、たいてい省かれています。
圧縮された1時間と、自分の積み上げを並べれば、開きが大きく見えて当然です。物差しを当てる相手は、壇上の人の現在地ではなく、自分の3か月前のほうだと思います。
払ったお金で埋まる部分は、限られている
私は、AI活用の成果を4つの掛け算だと考えています。
モデルの性能 × 指示の出し方 × 渡す材料 × 必要な情報を引き出す仕組み
いくつも契約して使い分けるという行為が触れているのは、1つ目だけです。しかも掛け算なので、残りのどれかがゼロに近ければ、1つ目をいくら磨いても結果は変わりません。
会場で目にした「幅」の正体は、おそらく2つ目から4つ目のほうです。その3つは、お金では買えません。
同じ話を聞いても、翌日には差が残る
もう1つ、直視したほうがいい事実があります。同じ会場にいた人のうち、翌日から同じレベルで動ける人はごく一部です。
手順は書き写せます。ただ、使い方はその人が抱えている顧客・案件・判断の蓄積の上にしか乗りません。器だけ手に入れても、注ぐものがなければ動かない。
怖い話に聞こえますが、裏返せば、今日から貯め始めた人にしか埋められない差でもあります。全員が明日から横並びになるわけではない、という意味です。
効いてくるまでには、期間と量の両方が要る
私は、記録を貯め始めてから手応えが出るまでの時期を「暗黒の3か月」と呼んでいます。
最初の1か月は、何のために書いているのか分からない。2か月目は、意味があるのか疑い始める。3か月目に続けるかやめるかの分かれ道が来て、そこを越えたあたりで、ようやく点と点がつながり始めます。本数で言えば、10本ではほとんど何も起きず、50本で薄くつながり、100本を超えたところで全体が見えてきます。
3か月経てば誰でも、という話ではありません。その3か月に何本書いたかです。時間と量の両方が要る。この面倒くささが、そのまま真似されにくさになります。
▶ AI活用マップ|コラム:AI活用の差は、積み上げでしか埋まらない
4つの掛け算の中身は、AI活用マップ本編で扱っています。
