「ありがとう」と言われる仕事をしたい 〜J-Net21「駆け出し診断士の奮闘記②」2013年掲載〜

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感謝される喜びに気づく

 私は大学卒業後にIT企業に就職し、システム開発に6年間携わってきました。その後、開発部門から経営に近い企画部門に異動したときに、何か勉強をしなければと上司に相談をしたことが、中小企業診断士を知り、興味を持ったきっかけでした。

 中小企業診断士資格は私を大きく変えていきました。資格の勉強をするなかでビジネスに関する知見が広がったのはもちろんのこと、それ以上に会社外部での交友関係・活動範囲が広がり、私自身が活発になっていきました。

 私が診断士になって嬉しかったことは、「ありがとう」という感謝の言葉をいただいたことです。読者の皆さんにとっては日常茶飯事のことかもしれません。しかし、IT企業で働いていたときは、大企業向けプロジェクトメンバーのひとりとして数ヶ月〜数年というプロジェクトに参画していました。会社対会社の取引であって、互いの担当者もプロジェクトが遂行されて当たり前という環境でした。そのような環境に慣れていた私にとって、経営者から面と向かって「ありがとうございました」と言われ、新鮮で達成感のある気持ちになったことを今でも鮮明に覚えています。

 そんな達成感を味わうために、私は企業に勤めながらも積極的に診断士活動に励みました。診断士受験生支援グループ「タキプロ」(URL:http://www.takipro.com)に所属し診断士受験生向けの自主企画セミナーや勉強会を開催したり、自己のスキルアップに社外での勉強会や研究会、プロコン塾などへ参加したり、もちろん中小企業支援も積極的に行なっていました。受験生支援にしろ、中小企業支援にしろ、人のためになっているという達成感が心地よかったのだと思います。土日のいずれかが、平日の夜も週の半分が診断士活動でスケジュールが埋まっていましたので、企業内診断士でありながら診断士資格の更新要件である実務ポイントが1年半で30ポイント貯まっていました。

人から感謝されたくて、独立の決意

 そんな思いもあって、人のためになる仕事をしたい、人から感謝される仕事をしたい、その思いを実現するために独立という選択肢を選びました。また、中小企業診断士の資格を取得したからには中小企業の役に立ちたいという、資格保有者の責務を感じたことも中小企業診断士として独立を決意した要因の一つでもありました。

 では、独立をしなければ達成できないことなのかというと、決してそのようなことはありません。企業の中にいても、やり方を変えればまたは異動や転職をすれば達成することができたと思います。私一人でできることは少ないかもしれないけれど、感謝の言葉は直接言われる達成感や充実感を味わいたいと思ったので、私は企業の中で働く(異動する・転職する)ことではなく、独立の手段を選びました。

独立半年の実績

 中小企業診断士の仕事は、「話す」「書く」「診断する」の3つと言われています。私の仕事や活動を挙げると、やはり3つに分類されています。

 「話す」では、先輩診断士にお声がけいただき自主企画セミナーを企画・講演をしました。また現在は4ヶ月にわたるIT研修の講師として週2回登壇をしています。「書く」では、今回のJ-net21への執筆のほか、所属している研究会に電子書籍の自作出版企画を持ちかけてAmazon電子書籍(共著)を出版しました。ビジネスモデル ギャラリー Vol.1 ~図解!ペニーオークションからAKB48まで話題の会社を読み解く最新事例集~(URL:http://www.amazon.co.jp/dp/B00C4VBTEE/)執筆時に想定していたよりもはるかに好評で反響が良く、Amazon総合ランキングで最高11位になるまで売れました。「診断する」では、この半年で12社の経営診断や経営改善支援に携わりました。また所属する東京都中小企業診断士協会城西支部のカバン持ち制度を利用して、先輩診断士から中小企業支援のノウハウを学びました。

仕事は人伝手にいただいている

 仕事は人伝手でいただくことがほとんどで、独立前に多くの人から聞いていたとおりでした。私の場合は「独立しました」と先輩診断士に報告すると、幸運なことに「手伝って欲しい仕事がある」「こんな仕事があるけど一緒にやらないか」などとお声がけくださいました。私のような経験を積みたい駆け出し診断士にとって、手ほどきをうけながら、実務を経験できるのは大変貴重です。ましてや独立まもない不安な時期に仕事ができるというのは、本当にありがたかったです。このように独立して最初の半年間を振り返ってみると、感謝されることよりも感謝することが多かったと思います。

 中小企業診断士としていくつかの公的機関や商工団体などに専門家登録をしました。登録するにもタイミングや募集枠があり、登録に至っていないところもあります。しかし、ただ登録しただけでは、仕事が舞い込んでくることはまずありません。指定フォーマットにて登録するので、登録機関としても判断するのが難しいのだと思います。ただ、このような登録機関でも顔つなぎができたり実績ができたりすると、連続してお声がけいただくことができました。

 結局、どんなケースであっても人脈が大切だと改めて感じます。

初心を忘れずに仕事したい  

 独立前に立てた計画・想定に比べると、忙しすぎるわけでもなく、仕事がなく絶望感を味わうということもありませんでした。未熟さを感じる毎日ですが、ありがとうと言っていただけることでとてもモチベーションが上がります。やはりこれが私の働く意義だと思います。この初心を忘れることのないように、人から感謝される仕事をたくさんしていきたいと思います。

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