パパが選んだ「独立」の道 〜J-Net21「駆け出し診断士の奮闘記①」2013年掲載〜

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人生の転機となった2012年

 まずは自己紹介がてら、私の「少し特異な経歴」をお伝えしておきます。

 私は、大学卒業後に入社したIT企業に10年間勤務しながら、2011年4月に中小企業診断士の資格を取得し、2012年10月に独立をした30代半ばの男です。と、ここまでは、普通の人と何ら変わらない経歴だと思います。

 「少し特異な経歴」というのは、家庭の事情が重なっているところにあります。2011年より同棲していた妻の妊娠がわかったのが、2012年3月末でした。その後、5月に入籍をし、7月に結婚式を挙げ、9月に新婚旅行に行き、11月には待望の娘が誕生しました。2012年は人生の一大イベントが2ヶ月おきにやってくるという激動の1年でした。

 妻に妊娠を告げられたときには、「どうしよう…」と迷いました。もちろん結婚や出産に対する迷いではなく、会社員を継続するか独立するか否かの迷いでした。

独立の決意

 ライフステージが変わるときに独立するなんてタイミングが悪すぎるのではないか、と考えるのが一般的でしょう。私は、妻から妊娠を告げられたとき、仕事と仕事以外の生活(家族)をどちらも充実させたいと考えました。つまり、ワーク・ライフ・バランスを意識したのです。ワーク・ライフ・バランスとは、「仕事と生活の調和」と訳され、ライフステージに応じて多様な生き方を選択・実現することで、仕事だけでなく家庭や地域生活などにおいても良い効果を出す考え方と取り組み全般を言います。

 妻は夜勤もあるシフト勤務の看護師だったため、生活リズムがバラバラでした。それをいいことに、働きながら診断士受験や資格取得後の診断士活動を自由にさせてもらっていたため、妻と過ごす時間は少なかったのです。このような生活スタイルのまま子どもが生まれてくると、家族をおざなりにしてしまうかもしれません。妻に子育てを押し付けることや家族と過ごす時間が少ないことで子どもに寂しい思いをさせることは避けたかったので、当然何かを削らなければなりませんでした。

 そんなとき、「独立して2〜3年もすればなんとか食べていけるようになる」という先輩診断士達の言葉とともに独立の選択肢が脳裏をよぎりました。もちろん発言の裏には相当な努力や苦労が隠れていて、安易に受け入れるのは楽観的すぎるでしょう。しかしながら、私に独立を決意させた決定的な言葉となったことは、間違いありません。

 「独立して2〜3年はうまく仕事を取ってこられないかもしれないけれど、子どもが産まれて手のかかる時期に、子どもと一緒に過ごせるチャンスでもある。仕事がなければ貯金を切り崩すことになるけれど、収入がゼロということにはならないだろうからなんとかやっていける。少しずつ子どもが外に出るようになった頃に、自分のやりたい仕事が軌道に乗って、収入もそれなりに入ってくるようになれば、こんな幸せなことはない。」

 このような言葉で妻を説得し、会社に退職届を提出しました。

自分の裁量で選択できる生活

 独立後1ヶ月が経ったある日、出産予定日より2週間早く娘が産まれました。

 その日は、以前にカバン持ちをさせていただいた先生のお誘いで、午後からある施設の見学へ行く予定でしたが、施設見学を断り出産に立ち会いました。

 産後1週間、妻と娘は入院。もちろん毎日面会に行きました。病室で仕事をしたり、何度か研究会や仕事で出掛けたりしましたが、毎日最低2時間は面会ができたと思います。

 日々の暮らしも優雅なものです。私の現在の仕事は外出するよりも自宅でパソコンに向かう(研修資料や報告書を作成する)仕事が多いので、仕事部屋に娘の泣き声が聞こえてきます。仕事の合間に機嫌のいい娘と遊ぶこともできますし、妻の手が離せないときに娘をあやしたりすることもできます。娘の生活のリズムに合わせるために、習慣であるジョギングも時間を繰り上げ、夕方6時頃に一緒にお風呂に入っています。最近では、叫び声のような大声をあげて話す練習をしているようで、些細な成長を日々感じています。

 昼間から娘と触れ合ったり、平日に家族との予定を入れたりできるのは、独立したことによって「何事も自分の裁量で選択できる」からだと思います。もちろん私も仕事がありますので、24時間一緒にいるわけではありません。子どもを持つ一般的なサラリーマンに比べると、毎日1時間くらい多く娘と過ごしているというのが実態でしょう。しかし、私が求めていた家族との時間はこの毎日の「+1時間」であり、今のところ思い描いたとおりに進んでいることに大変満足しています。

生活と仕事のバランスを取る

 しかし、ワーク・ライフ・バランスの視点では生活面に偏りがちで調和が取れていない状態です。家族を支えるには、当然のことながら収入・仕事面も考えなければなりません。

 諸先輩方が気にかけてくださっていることもあり、独立間もない時期から仕事をさせていただいています。診断協会の活動を通じて知り合った先輩の独立診断士のお手伝いで、マーケティング調査に同行させていただきました。実績ができると、単独でマーケティング調査の仕事を受注することができました。また、独立前から所属していた研究会を通じて知り合った方からは、都道府県が運営する職業訓練施設での4ヶ月にわたるIT研修講師の仕事を紹介していただきました。そのおかげで、独立前に作成した我が家の資金繰り計画の収入欄は計画を上回っている状態です。本当にありがたいことです。

 しかし、妻が育児休暇中であり、我が家の支出を上回るだけの収入を稼げていないのが現状です。当面の目標は、1日でも早く貯金を切り崩さない生活にすることです。

 我が家の資金繰り表が今後どのように変化していくか... 娘の成長に負けないように、パパも頑張らなくては!

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